はじめに
円関数(三角関数)の定義や性質、公式などを可視化して理解しようシリーズです。
この記事では、一般角に対する補角と円関数の関係のグラフを作成します。
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π - θ(補角)の可視化
和がと二直角(水平線)になる角(補角・supplementary angle)について、単位円における定義をグラフで確認します。また、変数(偏角)を二直角から引いたときの円関数(circular functions)・三角関数(trigonometric functions)との関係を確認します。
度数法と弧度法(角度とラジアン)の関係や単位円における偏角については「【R】円周の作図 - からっぽのしょこ」を参照してください。
利用するパッケージを読み込みます。
# 利用パッケージ library(tidyverse)
この記事では、基本的に パッケージ名::関数名()
の記法を使うので、パッケージの読み込みは不要です。ただし、作図コードについてはパッケージ名を省略するので、ggplot2
を読み込む必要があります。
また、ネイティブパイプ演算子 |>
を使います。magrittr
パッケージのパイプ演算子 %>%
に置き換えられますが、その場合は magrittr
を読み込む必要があります。
定義式の確認
まずは、補角の定義と円関数との関係を数式で確認します。
各関数についてはそれぞれの記事を参照してください。
和が二直角(直線)となる2つの角度
について、一方の角度 に対して他方の角度 を補角と呼びます。
について式を整理すると、補角の計算式が得られます。
変数 はラジアン(弧度法の角度)で、鋭角 (度数法の角度だと )の範囲外も扱います。 は円周率です。
sin関数とcos関数に関して、2つの角度は、次の関係になります。
sin関数は値が変わらず、cos関数は符号が反転した値と一致します。
この関係を用いると、sin関数またはcos関数を用いて定義される関数
は、次の関係になります。
直角三角形と角の関係
一般角を扱う前に、直角三角形における(鋭角に対する)補角の定義を確認しておきます。
・直角三角形と補角の関係
直線は なので、始線(x軸線の正の部分)から動径線までの鋭角を とするともう一方(補角)は で表わせます。
・補角を基準とした場合
を基準(偏角)とすると、 が補角になり、第2象限に合同な直角三角形を描けます。
・補角と座標
半径 の円周上の点に関して、 を偏角とする点 と を偏角とする点 は、 の直線(y軸線)に対して線対称な位置関係になります。
ただしここまでの図は、基準となる角度が鋭角 の場合に限定しています。次では、一般角(全ての角度)に拡張した場合を考えます。
単位円と関数の関係
次は、単位円における偏角(単位円周上の点)と円関数(sin・cos)の関係を可視化します。
角度の符号の反転については「【R】-θ(負角)の可視化 - からっぽのしょこ」を参照してください。
グラフの作成
変数を固定して、単位円における偏角のグラフを作成します。
・作図コード(クリックで展開)
基準となる角度を指定し対象の角度を計算して、円周上の点の描画用のデータフレームを作成します。
# 点用のラジアンを指定 theta <- 2/6 * pi # 補角を計算 tau <- pi - theta # 円周上の点の座標を作成 point_df <- tibble::tibble( t = c(theta, -theta, tau), x = cos(t), y = sin(t), type = c("main", "sub", "target") # 角度カテゴリ ) point_df
# A tibble: 3 × 4 t x y type <dbl> <dbl> <dbl> <chr> 1 1.05 0.5 0.866 main 2 -1.05 0.5 -0.866 sub 3 2.09 -0.5 0.866 target
変数(ラジアン) を指定して、二直角との差 を計算します。
3つの偏角 について、単位円の円周上の点の座標 を計算します。
偏角を示す線分の描画用のデータフレームを作成します。
# 半径線の終点の座標を作成 radius_df <- dplyr::bind_rows( # 始線 tibble::tibble( x = 1, y = 0, type = "main" # 角度カテゴリ ), # 動径線 point_df |> dplyr::select(x, y, type) ) radius_df
# A tibble: 4 × 3 x y type <dbl> <dbl> <chr> 1 1 0 main 2 0.5 0.866 main 3 0.5 -0.866 sub 4 -0.5 0.866 target
原点と点 を結ぶ線分(始線)、原点と点 を結ぶ線分(動径線)用に、円周上の点の座標を格納します。原点 の座標は、作図時に引数に直接指定します。
角マークの描画用のデータフレームを作成します。
# 角マークの座標を作成 ds <- 0.005 angle_mark_df <- tibble::tibble( t = c(theta, -theta, tau), type = c("main", "sub", "target"), # 角度カテゴリ d = c(0.15, 0.25, 0.35) # マークサイズを指定 ) |> dplyr::reframe( u = seq(from = 0, to = t, length.out = 600), .by = dplyr::everything() ) |> # 円弧用のラジアンを作成 dplyr::mutate( x = (d + ds*u) * cos(u), y = (d + ds*u) * sin(u) ) angle_mark_df
# A tibble: 1,800 × 6 t type d u x y <dbl> <chr> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl> 1 1.05 main 0.15 0 0.15 0 2 1.05 main 0.15 0.00175 0.150 0.000262 3 1.05 main 0.15 0.00350 0.150 0.000525 4 1.05 main 0.15 0.00524 0.150 0.000787 5 1.05 main 0.15 0.00699 0.150 0.00105 6 1.05 main 0.15 0.00874 0.150 0.00131 7 1.05 main 0.15 0.0105 0.150 0.00157 8 1.05 main 0.15 0.0122 0.150 0.00184 9 1.05 main 0.15 0.0140 0.150 0.00210 10 1.05 main 0.15 0.0157 0.150 0.00236 # ℹ 1,790 more rows
3つの偏角 を示す角マークとして、 のラジアンを作成して、係数が の螺旋の座標 を計算します。この例では、ノルムの基準値 d
と間隔用の係数 ds
でサイズを調整します。ds
を 0
にすると、半径が の円弧の座標 になります。
角ラベルの描画用のデータフレームを作成します。
# 角ラベルの座標を作成 angle_label_df <- tibble::tibble( d = c(0.1, 0.3, 0.4), # ラベル位置を指定 u = 0.5 * c(theta, -theta, tau), x = d * cos(u), y = d * sin(u), angle_label = c("theta", "-theta", "tau") ) angle_label_df
# A tibble: 3 × 5 d u x y angle_label <dbl> <dbl> <dbl> <dbl> <chr> 1 0.1 0.524 0.0866 0.05 theta 2 0.3 -0.524 0.260 -0.15 -theta 3 0.4 1.05 0.2 0.346 tau
角マークの中点に角ラベルを配置することにします。 のラジアンを作成して、円弧上の点の座標を計算します。原点からのノルム d
で表示位置を調整します。
関数を示す線分の描画用のデータフレームを作成します。
# 関数の描画順を指定 fnc_level_vec <- c("sin", "cos") # 関数線分の座標を作成 fnc_seg_df <- tibble::tibble( fnc = c( "sin", "cos", "sin", "cos", "sin", "cos" ) |> factor(levels = fnc_level_vec), # 関数カテゴリ type = c( "main", "main", "main", "main", "target", "target" ), # 角度カテゴリ x_from = c( cos(theta), 0, 0, 0, cos(tau), 0 ), y_from = c( 0, 0, 0, sin(theta), 0, 0 ), x_to = c( cos(theta), cos(theta), 0, cos(theta), cos(tau), cos(tau) ), y_to = c( sin(theta), 0, sin(theta), sin(theta), sin(tau), 0 ) ) fnc_seg_df
# A tibble: 6 × 6 fnc type x_from y_from x_to y_to <fct> <chr> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl> 1 sin main 0.5 0 0.5 0.866 2 cos main 0 0 0.5 0 3 sin main 0 0 0 0.866 4 cos main 0 0.866 0.5 0.866 5 sin target -0.5 0 -0.5 0.866 6 cos target 0 0 -0.5 0
各線分(の長さ)に対応する関数カテゴリを fnc
列として線の描き分けなどに使います。線分の描画順(重なり順や色付け順)を因子レベルで設定します。
各線分の始点の座標を x_from, y_from
列、終点の座標を x_to, y_to
列として、完成図を見ながら頑張って格納します。
関数ラベルの描画用のデータフレームを作成します。
# 関数ラベルの座標を作成 fnc_label_df <- tibble::tibble( fnc = c( "sin", "cos", "sin", "cos" ) |> factor(levels = fnc_level_vec), # 関数カテゴリ x = c( cos(theta), 0.5*cos(theta), cos(tau), 0.5*cos(tau) ), y = c( 0.5*sin(theta), 0, 0.5*sin(tau), 0 ), fnc_label = c( "sin~theta", "cos~theta", "sin~tau", "cos~tau" ), a = c( 90, 0, 90, 0 ), h = 0.5, v = c( -0.5, -0.5, 1.5, 1.5 ) ) fnc_label_df
# A tibble: 4 × 7 fnc x y fnc_label a h v <fct> <dbl> <dbl> <chr> <dbl> <dbl> <dbl> 1 sin 0.5 0.433 sin~theta 90 0.5 -0.5 2 cos 0.25 0 cos~theta 0 0.5 -0.5 3 sin -0.5 0.433 sin~tau 90 0.5 1.5 4 cos -0.25 0 cos~tau 0 0.5 1.5
偏角と関数の組み合わせごとに1つの線分の中点に関数名を表示することにします。
ラベルの表示角度を a
列、表示角度に応じた左右の表示位置を h
列、上下の表示位置を v
列として指定します。
各種ラベルの表示用の文字列を作成します。
# ラベル用の文字列を作成 def_label <- paste0( "list(", "tau == pi - theta, ", "sin(pi - theta) == sin~theta, ", "cos(pi - theta) == -cos~theta", ")" ) angle_label_vec <- paste( c("theta", "-theta", "tau"), c(theta/pi, -theta/pi, tau/pi) |> round(digits = 2), sep = " == " ) |> paste("* pi") fnc_label_vec <- paste( c("sin~theta", "cos~theta"), c(sin(theta), cos(theta)) |> round(digits = 2), sep = " == " ) def_label; angle_label_vec
[1] "list(tau == pi - theta, sin(pi - theta) == sin~theta, cos(pi - theta) == -cos~theta)" [1] "theta == 0.33 * pi" "-theta == -0.33 * pi" "tau == 0.67 * pi"
サブタイトル用の変数ラベル、凡例用の関数ラベルを作成します。
ラベルとして数式(ギリシャ文字や記号)を表示する場合は、expression()
の記法を用います。その際に、オブジェクト(プログラム上の変数)を使う場合は、文字列として作成しておき parse()
の text
引数に渡します。
単位円と角度(ラジアン)目盛の描画用のデータフレームを作成します。
# 円周の座標を作成 circle_df <- tibble::tibble( t = seq(from = 0, to = 2*pi, length.out = 361), # 1周期分のラジアン r = 1, # 半径 x = r * cos(t), y = r * sin(t) ) # 半円(範囲π)における目盛数(分母の値)を指定 tick_num <- 6 # 角度目盛の座標を作成:(補助目盛有り) d <- 1.1 rad_tick_df <- tibble::tibble( # 座標用 i = seq(from = 0, to = 2*tick_num-0.5, by = 0.5), # 目盛番号(分子の値) t_deg = i/tick_num * 180, # 度数法の角度 t_rad = i/tick_num * pi, # 弧度法の角度(ラジアン) r = 1, # 半径 x = r * cos(t_rad), y = r * sin(t_rad), major_flag = i%%1 == 0, # 主・補助フラグ grid = dplyr::if_else(major_flag, true = "major", false = "minor"), # 目盛カテゴリ # ラベル用 rad_label = dplyr::if_else( major_flag, true = paste0("frac(", i, ", ", tick_num, ") ~ pi"), false = "" ), # ラジアンラベル label_x = d * x, label_y = d * y, a = t_deg + 90, h = 1 - (x * 0.5 + 0.5), v = 1 - (y * 0.5 + 0.5), tick_mark = dplyr::if_else(major_flag, true = "|", false = "") # 目盛指示線用 )
詳しくは「円周の作図」を参照してください。
単位円における3つの偏角のグラフを作成します。
# グラフサイズを設定 axis_size <- 1.5 # 単位円における偏角と関数線分を作図 ggplot() + geom_segment(data = rad_tick_df, mapping = aes(x = 0, y = 0, xend = x, yend = y, linewidth = grid), color = "white", show.legend = FALSE) + # θ軸目盛線 geom_text(data = rad_tick_df, mapping = aes(x = x, y = y, angle = a, label = tick_mark), size = 2) + # θ軸目盛指示線 geom_text(data = rad_tick_df, mapping = aes(x = label_x, y = label_y, label = rad_label, hjust = h, vjust = v), parse = TRUE) + # θ軸目盛ラベル geom_segment(mapping = aes(x = c(-Inf, 0), y = c(0, -Inf), xend = c(Inf, 0), yend = c(0, Inf)), arrow = arrow(length = unit(10, units = "pt"), ends = "last")) + # x・y軸線 geom_path(data = circle_df, mapping = aes(x = x, y = y), linewidth = 1) + # 円周 geom_segment(data = radius_df, mapping = aes(x = 0, y = 0, xend = x, yend = y, linetype = type), linewidth = 1, show.legend = FALSE) + # 半径線 geom_path(data = angle_mark_df, mapping = aes(x = x, y = y, linetype = type), show.legend = FALSE) + # 角マーク geom_text(data = angle_label_df, mapping = aes(x = x, y = y, label = angle_label), size = 5, parse = TRUE) + # 角ラベル geom_point(data = point_df, mapping = aes(x = x, y = y, shape = type), size = 4, show.legend = FALSE) + # 円周上の点 geom_segment(data = fnc_seg_df, mapping = aes(x = x_from, y = y_from, xend = x_to, yend = y_to, color = fnc, linetype = type), linewidth = 1) + # 関数線分 geom_text(data = fnc_label_df, mapping = aes(x = x, y = y, label = fnc_label, color = fnc, hjust = h, vjust = v, angle = a), parse = TRUE, show.legend = FALSE) + # 関数ラベル scale_color_hue(labels = parse(text = fnc_label_vec), name = "function") + # 凡例表示用 scale_shape_manual(breaks = c("main", "sub", "target"), values = c("circle", "diamond open", "circle open")) + # 補助点用 scale_linetype_manual(breaks = c("main", "sub", "target"), values = c("solid", "dashed", "twodash"), labels = parse(text = angle_label_vec), name = "angle") + # 補助線用, 凡例表示用 scale_linewidth_manual(breaks = c("major", "minor"), values = c(0.5, 0.25)) + # 主・補助目盛線用 guides(linetype = guide_legend(override.aes = list(linewidth = 0.5))) + theme(legend.text.align = 0) + coord_fixed(ratio = 1, xlim = c(-axis_size, axis_size), ylim = c(-axis_size, axis_size)) + labs(title = "supplementary angle", subtitle = parse(text = def_label), x = expression(x == r ~ cos~theta), y = expression(y == r ~ sin~theta))
基準となる偏角(始線から動径線までの反時計回りの角度) を黒色の丸印と実線、負角 を白抜きの四角印と破線、二直角との差(補角) を白抜きの丸印と鎖線で示します。
アニメーションの作成
変数を変化させて、単位円における偏角のアニメーションを作成します。
作図コードについては「diff_straight_angle.R at anemptyarchive/Mathematics · GitHub」を参照してください。
・偏角と関数の関係
偏角 が大きくなると左に回転し、逆に が小さくなるので右に回転します。 変数 を二直角 から引く( の点から左に 回転する)と、sin関数は変わらず 、cos関数の符号が反転する のを確認できます。
・偏角と座標の関係
直線 に対して線対称に変化します。
この記事では、二直角との差を確認しました。次の記事では、直角との和を確認します。
おわりに
二直角という呼び方を始めて知りました。字面から直角2個分の角度というのは分かったので、直線を足すと表現するよりも分かりやすいだろうと思い使うことにしました。もっと良い表現はあるでしょうか。
2024年4月9日は、ukkaの結城りなさんの21歳のお誕生日です。
えびちゅう目的で加入したニコニコのアイドルチャンネルで観れた卒コンと新体制コン(↑のライブです)の結城りなさんをきっかけにukkaを追い始めたド新規です。スタプラは各グループが個性が強めのコンセプトで展開されていると思うのですが(?)、一番王道なアイドルグループなんじゃないでしょうか(どのコンセプトが良いという話ではなく)。
ライブが丸々公開されているのは新規的にとてもありがたいです。ここに貼る動画をどれにするか見ていたら、さらに1年前のライブもあったので早速観ながら次の記事の作業に移ります!
【次の内容】
https://www.anarchive-beta.com/entry/2024/04/10/090000www.anarchive-beta.com