はじめに
機械学習でも登場する情報理論におけるエントロピーを1つずつ確認していくシリーズです。
この記事では、対数の性質を扱います。
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対数の性質の導出
対数の性質(properties of logarithms)を導出します。
対数については「対数の定義 - からっぽのしょこ」を参照してください。
定義式
対数は、次の式で定義されます。
を底、 を真数、 を指数と呼びます。底は0より大きい1ではない値 、真数は0より大きい値 である必要があります。
性質
対数には、次の性質があります。
対数をとると、積が和、商が差になります。
式(8)の計算により底を変換できます。
性質の導出
上で上げた8つの性質についてそれぞれ導出します。
底と真数が同じ対数の導出
真数の値に関わらず1乗しても値は変わらないので、対数の定義式より、整数(1)の関係が成り立ちます。
底と同じ値の対数をとると1になります。
0の対数の導出
底の値に関わらず0乗は1なので、対数の定義式より、性質(2)の関係が成り立ちます。
1の対数をとると0になります。
積の対数の導出
それぞれの対数について、対数の定義式を用いて、次のようにおきます。
2つの指数の式(右側の式)に関して、両辺それぞれの積をとります。指数の性質より です。
対数の定義式より、この式から次の式が成り立ちます。
を元の式に戻すと、性質(2)の関係が得られます。
積の対数は、対数の和になります。
累乗の対数の導出
が整数の場合、 は 個の の積なので、性質(4)は、性質(3)を用いて導けます。
乗の対数は、対数の 倍になります。
が実数の場合、対数の定義式を用いて、次のようにおきます。
指数の式(右側の式)に関して、両辺を 乗します。指数の性質より です。
対数の定義式より、この式から次の式が成り立ちます。
を元の式に戻すと、性質(4)の関係が得られます。
実数の場合も 乗の対数は、対数の 倍になります。
逆数の対数の導出
逆数は-1乗 なので、性質(5)は、性質(4)を用いて導けます。
逆数の対数は、負の対数になります。
商の対数の導出
性質(6)は、性質(3)と性質(5)を用いて導けます。
分数の対数は、分子と分母それぞれの対数の差になります。
分母分子の入替の導出
性質(7)は、性質(6)を用いて導けます。
分数の対数は、符号を反転させる (-1を掛ける)と分母分子が入れ替わります。
底の変換の導出
対数の定義式より、次のようにおきます。
指数の式(左側の式)の に、対数の式(右側の式)を代入します。
底を として、両辺の対数をとります。
性質(4)より指数を対数の外に下ろします。
両辺を で割ると、性質(8)の関係が得られます。
この式により底を変換できます。
この記事では、対数の性質を導出しました。次の記事からは、対数を用いて定義される情報量・エントロピーを確認していきます。
参考文献
- 『わかりやすい ディジタル情報理論』(改訂2版)塩野 充・蜷川 繁,オーム社,2021年.
おわりに
このブログの最初期からずっと主にベイズ推論の対数尤度の文脈で、積の対数は対数の和だというのはそういうものとして数式パズルを解いてきました。5年目にして、いい機会なので導出してみました。これでこの部分に対しては数学として付き合っていけそうです(ちょっぴり嘘)。
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