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ポアソン分布のモーメント母関数の導出

はじめに

 機械学習や統計学で登場する各種の確率分布について、「計算式の導出・計算のスクラッチ実装・計算過程や結果の可視化」などの「数式・プログラム・図」を用いた解説により、様々な角度から理解を目指すシリーズです。

 この記事では、ポアソン分布のモーメント母関数について数式を使って確認します。

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ポアソン分布のモーメント母関数の導出

 ポアソン分布(Poisson distribution)のモーメント母関数(積率母関数・moment-generating function)を導出します。
 ポアソン分布については「ポアソン分布の定義式 - からっぽのしょこ」、モーメン母関数については「モーメント母関数 - からっぽのしょこ」を参照してください。

モーメント母関数の導出

 ポアソン分布の定義式を用いて、モーメント母関数の式を求めます。

 ポアソン分布は、パラメータ  \lambda を用いて、次の式で定義されます。

 \displaystyle
\mathrm{Poisson}(x \mid \lambda)
    = e^{-\lambda}
      \frac{\lambda^x}{x!}

 ここで、 x は単位時間における事象の発生回数、 \lambda は発生回数の期待値を表します。 x は非負の整数  x \in \{0, 1, 2, \cdots\} をとり、 \lambda は正の値  \lambda \gt 0 を満たす必要があります。
 また、 e はネイピア数、 x! x の階乗です。
 詳しくは「分布の定義式」を参照してください。

 モーメント母関数は、 e^{tx} の期待値で定義されます。 e はネイピア数です。

 \displaystyle
\begin{aligned}
M(t)
   &= \mathbb{E}[e^{tx}]
\\
   &= \sum_{x=0}^{\infty}
          e^{tx}
          \mathrm{Poi}(x \mid \lambda)
\\
   &= \sum_{x=0}^{\infty}
          e^{tx}
          e^{-\lambda}
          \frac{\lambda^x}{x!}
\end{aligned}

途中式の途中式(クリックで展開)


  • 1:  e^{tx} の期待値の式を立てます。
  • 2: 離散型確率分布の期待値の定義式  \mathbb{E}[x] = \sum_x f(x) p(x) より、関数  e^{tx} と確率分布  \mathrm{Poi}(x \mid \lambda) の積和の式に置き換えます。
  • 3: ポアソン分布の定義式より、確率分布を具体的な式に置き換えます。

  x に関して式を整理します。

 \displaystyle
\begin{aligned}
M(t)
   &= e^{-\lambda}
      \sum_{x=0}^{\infty}
          \frac{(e^t)^x \lambda^x}{x!}
\\
   &= e^{-\lambda}
      \sum_{x=0}^{\infty}
          \frac{(e^t \lambda)^x}{x!}
\end{aligned}

途中式の途中式(クリックで展開)


  • 1: 指数の性質  x^{ab} = (x^a)^b より、ネイピア数の項を変形します。
  • 1:  x と無関係な項を  \sum_{x=0}^{\infty} の外に出します。
  • 2: 指数の性質  x^a y^a = (x y)^a より、 x の項をまとめます。

 総和の項について、指数関数のマクローリン展開の式の形をしているので、指数関数に変形します。

 \displaystyle
\begin{aligned}
M(t)
   &= e^{-\lambda}
      e^{e^t \lambda}
\\
   &= e^{e^t \lambda - \lambda}
\\
   &= e^{\lambda (e^t - 1)}
\end{aligned}

途中式の途中式(クリックで展開)


  • 1: 指数関数のマクローリン展開  e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} より、非負の整数  x n e^t \lambda x に対応させて、総和の項を置き換えます。
  • 2: 指数の性質  x^a y^a = (x y)^a より、ネイピア数の項をまとめます。
  • 3:  \lambda を括ります。

 モーメント母関数の式が得られました。

 指数部分が分かりやすいように、指数関数を  e^x = \exp(x) で表現すると、次の式になります。

 \displaystyle
\begin{aligned}
M(t)
   &= \exp(- \lambda)
      \exp \Bigl(
          \exp(t) \lambda
      \Bigr)
\\
   &= \exp \Bigl(
          \exp(t) \lambda
          - \lambda
      \Bigr)
\\
   &= \exp \Bigl(
          \lambda
          (\exp(t) - 1)
      \Bigr)
\end{aligned}

 先ほどと同じ式を表します。

 以上で、ポアソン分布のモーメント母関数の計算式が求まりました。

 この記事では、ポアソン分布のモーメント母関数の式を求めました。次の記事では、特性関数の式を求めます。

参考文献

おわりに

 モーメント母関数ってモーニング娘。感あるよね?

  • 2025.08.16:加筆修正しました。

 未だにそう思ってる。

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